2010年1月31日日曜日

第 1 回日本肝がん分子標的治療研究会に参加して

1月16日土曜日 第1回日本肝がん分子標的治療研究会が、神戸市ポートピアホテルにて開催されました。

 会の趣旨は、昨年肝がん領域では初めての分子標的薬ネクサバールが登場しました。まったく新たな抗がん剤なので効果と副作用について、皆でデータを持ち合い議論しようという研究会です。

まず分子標的薬とはどのような薬なんでしょうか?
 従来の抗がん剤のジレンマは、ガンを抑えると同時に正常な細胞にも影響を及ぼしてしまうことです。ところが分子標的薬は、ガンの進行に影響を与える特定の分子だけに作用するので、理論的には大変都合の良い薬です。ネクサバールは、腫瘍細胞を増殖させる細胞内の経路(指令)を中断させたり、腫瘍を養う新生血管の成長を邪魔することによってガンの成長を抑えるお薬です。

 わかりやすく例えると、正常細胞と癌細胞を作っている工場があるとします。ネクサバールは、「がん細胞を作りなさい」という工場長の指示を伝達の過程で止めてしまいます。さらに癌細胞を作っている生産ラインの電源を止めてしまい癌細胞を作れなくしてしまうのです。

 理論的には非常に良いのですが、人体の細胞は非常に複雑な機能を持っています。昔、NHKの番組でもあったように”小宇宙”なんです。ですから予期しないことも起こる訳で、その代表が手足皮膚反応という副作用なのです。これは手のひら(特に指)や足のひらの硬いところ(角質)が痛くなったり腫れたりただれたりする副作用です。他に高血圧や下痢、倦怠感などがみられます。

 薬は全て”両刃の剣”ですから、今回の研究会は参加者にとって有意義な会となるわけで結果として患者さんの役に立つわけです。

 当科からは29例の使用経験を発表させて頂きました。治療効果のスライドを提示します。例え遠隔転移があるような進行肝がんでも腫瘍の進展が抑えられます。肝機能が良いことが使用の絶対条件で、上手に副作用をコントロールして長く服用するのがコツだと思います

 いずれにしても肝がん治療に新しい兵器が加わったことは事実です。上手に使って更に患者さんが元気で長生きできるように期待します。

2010年1月3日日曜日

あけましておめでとうございます。

平成21年 寅年

 新しい年の始まりです。我々肝がんの領域では、昨年はネクサバールという抗がん剤が登場しました。今年はミリプラという抗がん剤が新たに登場する予定です。医療に携わる全ての人々の弛まぬ努力が、明日の生きる希望を繋ぎます。朝日に負けないぐらい輝く一年にしたいと思います。

 
 初詣でいくつか神社を参拝しました。皆様が元気で長生きできるようにお祈りしてきました。
今年は日本経済も立ち直って欲しいという願望も兼ねて、伏見稲荷にお参りしました。
写真は病気平癒守です。今年も、精一杯生きましょう。





2010年1月1日金曜日

肝臓いきいき教室

12月18日 ”肝臓いきいき教室” を栄養科の皆様のご協力によって開催しました。テーマは「年末年始の食事について」です。参考にして下さい。
ブログ掲載が遅くなってしまいました。次回から各季節ごとに食事のレシピを掲載したいと思います。



    肝臓病教室
年末・年始の食事について

Q1.食べ過ぎては何故いけないのでしょうか?

A   肝臓は働き者でいろいろな仕事を引き受けています。

* 食べ物に含まれる栄養素糖質・蛋白質・脂肪を体に利用できる形に作り直します。
* 血液を固まらせる凝固因子を作ります。
* 壊れた赤血球からビリルビンを作ります。
* 薬物、アルコール、毒素、など体に入ったものを体にとって無毒なものにします。
ですから、肝臓の働きが鈍くなってしまうと体のバランスが崩れ体に影響が出てきてしまいます。
Q2.塩分はどうして控えるのでしょうか?

A   肝臓は、〈アルブミン〉というたんぱく質を作ることにも関わっています。


 血管の中に水を引き込む力を持っている〈アルブミン〉は肝臓が悪くなると、作れなくなり引き込めなくなって水がおなかの所にたまって圧迫します。 これが腹水です。
腹水があると圧迫して食欲もなくなってしまいます。 利尿剤の効力も弱くなります。 利尿剤は尿を出すのではなく、塩分を体の外に出すものなのです。
 塩分を出しているのに、塩分を多く取っていては無駄になってしまいます。
肝臓は沈黙の臓器と言われています。 少し働きが鈍くなっても痛みなどはありません。
大丈夫を思ってそのまま無理を続けてしまわない様に注意しましょう。


肝臓を守るためには、食事を選びながら
バランスよく食べることが大切です。

というわけで、栄養科の皆さんが考えてくれた年末年始のメニューです。参考にされてはいかがでしょうか?何をどの位食べると良いのかという目安なので、作り方は料理の本を参照して下さいね。

のメニューです。
これでなんと670カロリー 塩分2.3g 蛋白28.3gです。

パン 2個 ステーキ 2切れ 温野菜 3種 サラダ 1皿 ポタージュスープ
ケーキ 1個 紅茶 1杯


食べ方のポイント
肉はステーキで二切れ、鶏の唐揚げなら2個
サラダは野菜なのでたくさん食べてもOK
ケーキの大きさは豆腐1/4丁
塩分を制限している方
ドレッシングはスプーン1杯スープはカップに半分位の量

【作り方】 まず材料を揃えます。今回は4人分を目安にしました。
バターロール 8個
ステーキ  油 小さじ1  牛ヒレ肉  8切(200g)  塩 小さじ1/3  黒こしょう 少々
温野菜 人参 8切  アスパラ 4本  じゃが芋 2個
サラダ  トマト 1個  カリフラワー 1/4株  胡瓜 1本  ドレッシング 大さじ2

ステーキ
① 牛肉に塩・黒こしょうをふりかける(室温にしておく)
② アスパラ・人参は茹でる。アスパラは油で炒めて、塩コショウし、人参はバターと砂糖・コンソメで調味する。じゃが芋は茹で、粉ふきにする。
③ フライパンに油をしき、両面を強火で焼き、中火にして好みの焼き加減にする。
サラダ
① カリフラワーは小房にわけ、沸騰した湯にいれて柔らかくなるまで茹でる。
② トマトはくしに切り、胡瓜は斜めに切る。


愛情をタップリ振り掛けるのは言うまでもありません(笑)

大晦日のメニュー

これでなんと塩分3.0g 650カロリー 蛋白21.4gです!

天ぷらそば1玉 海老 1尾 なす 1個 さつま芋 1個 ピーマン 1個 ししとう 2本
白菜煮浸し小鉢 フルーツ 2切

食べ方のポイント
てんぷらは全部で5個 そばは1玉、えびは1尾まで
野菜が不足しないように副菜を必ず入れます。(当院の職員食堂でも定番の白菜煮浸しです。旬の野菜はおいしくて安い!)
塩分を制限している人は塩分が多いので汁1/2に控えてくださいね。


お正月メニュー

これが塩分2.0g 366カロリーの目安です。

雑煮 お餅2個 しいたけ1個 小松菜1個 大根2個 人参1個 八つ頭1個

祝い膳 かずのこ 4分の1腹 黒豆 小15粒 田作り10匹位 みかん 1個 


食べ方のポイント
お雑煮は餅2個までで汁は少なく、野菜はたっぷりにする

【作り方】 まず材料を揃えます。今回は4人分を目安にしました。 関東風ですね。
お餅8個 しいたけ4個 小松菜1/2束 大根1/4本 人参1個 八つ頭1/8個 塩小さじ1 醤油
小さじ1と1/2 昆布1枚 削り鰹1パック

① 八つ頭をよく洗い、食べられる大きさに切ります。
② 小松菜は塩茹でにし、4cmの長さに切ります。
③ 大根・人参は型又は食べられる大きさに切ります。
④ 昆布は表面に切れ目を入れ、水7カップと共に中火にかけます。
⑤ 煮立つ直前に昆布を取り出して、火を弱めて、削り鰹を入れます。
⑥ ひと煮立ちしたら、すぐに火を止める。削り鰹が自然に沈んだら、ザルでそっとこしてだし汁を作ります。
⑦ 八つ頭を2カップ分のだし汁に入れ、竹串がスーと入るまで茹でます。
⑧ 5カップ分のだし汁を大根・人参・しいたけを入れ煮立て、
アクをとりながら弱火で10分煮ます。調味料を加え煮立てます。
⑨ お餅を網で焼き、熱湯にくぐらせてから椀に盛り付けます。
具ときれいに盛りつけ、温かくたし汁を盛り付けて、ハイ、出来上がりです。

おせちの塩分量

お醤油は大さじ1杯 2.5g もありますよ。 上の写真の分量でそれぞれ、黒豆 0.1g なます0.1g 酢蓮 0.2g 昆布巻き 0.3g 伊達巻 0.3g 数の子 0.3g かまぼこ 0.7g 松笠焼き 0.8g です。
おせちは味が濃いので注意が必要ですね。



正月のお昼のメニュー
塩分もカロリーもちょっと贅沢に、塩分3.7g 757カロリー 蛋白36.9g です。



松笠焼き1個 酢蓮4枚 伊達巻1個 蒲鉾2枚 昆布巻き2個 手毬麩2個 干し杏1個 高野豆腐の煮物2切 人参1個 ブロッコリー2個 豆きんとん4粒 なます 黒豆小15粒 お刺身3切れ
五穀ご飯 1杯 清汁 1杯


正月の夕食のメニュー

塩分3.0g 677カロリー 蛋白17.1gです。

唐揚げ2個 いんげん にんじん コーン ポテトサラダ トマト
おめでたい焼き(栄養科のセンスです。) 五穀ご飯 清汁
朝・昼と和食の時は塩分が多くなりがちです。そんな時、夕食には洋食・中華のメニューのものがおすすめです。
カレー・ポークソテー・南蛮漬・ホワイトシチュー・八宝菜などにしてサラダを加えるなど・・・工夫して下さい。

 楽しい団欒が何よりものレシピであり薬でもあります。

2010年が皆様にとって素晴らしい年になりますようにお祈り致します。